スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

和歌山東海岸旅行記 ~1日目・異文化~

 グローバリズムが横行する中、日本全国どこに行ったって大して変わらないだろうという考えは、少なからずあった。その思いが良い意味で最初に裏切られたのは木曽川だった。
 海とも川とも言えぬその広さ、思わず頭に浮かんだのが未だ見ぬ黄河。岸から岸まで余すところなく薄濁った水が張り詰められている。およそ静岡には存在しないその川としての在り方は、遠い日に学び舎で聞いただけの異国風情を連想させた。
 北アメリカプレートに属する東海から、フィリピン海プレート上に移ったからだろうか。その後に続く特急ワイドビュー南紀からの風景は、どこか微妙に違っていた。ごろごろとした大きな岩の間をなめらかに滑るエメラルドグリーンの川、車窓から見えるごつごつとした磯、すぐ右側には山が延々と続く。そのどれもが、見慣れた東海の風景とは微妙に違う。
 和歌山の東側は、海岸と山地に挟まれた、非常に狭い平地に細長く続く町の連続だった。

 徐々に雨が降ってきた。14時過ぎ、紀伊天満駅に着く頃には本降りになっていた。駅は無人で、電車は1時間に1本、時間帯によっては3時間に1本しか来ない。近くにコンビニはおろか、店らしい店も無い。線路を山側から海側に渡る踏切も見つからない。雨は強くなったり弱くなったりだ。野球の試合が終わったばかりの小学生たちが、元気に濡れながら自転車を漕いでいく。駄菓子屋のおばあさんと道路をはさんで会話していたおじいさんに道を聞いて、ようやくホテルに辿り着いた。
 チェックイン時に、試しに傘の販売はないか尋ねたところ、案の定無かった。全身が濡れていて、早く部屋に行って小休止したかったが、受付の男性はとても丁寧にホテルの説明をし始めた。話半分に聞いていると、「テレビは地デジがつきませんで……」と聞こえた。そんなことがあるのだろうか。もちろんテレビ目的で来ているわけではないが、想像以上の田舎の中でコンビニもテレビも無いというのは正直心細く思った。ただ、NHKとBSはつくということだ。――そんなこともあるのだろうか。内心ほっとしながら思った。重いスーツケースを引き摺り部屋へ向かう僕の背中に、腰の低い丁寧なホテルマンの声が降りかかる。
「すみません。エレベーターが無いので、階段でお上がり下さい」

 部屋は狭くなく、清潔で好感が持てた。ユニットバスがあるが、系列店の温泉を無料で使えるシステムになっている(ただ、徒歩だと15分掛かる)。テレビもBSをバッチリ楽しむことができる。Jリーグの試合をやっていて、少しテンションが上がった。濡れた服を脱ぎ、サッカーを観ながら少し休んでいると、備え付けの電話が鳴った。取ると、先刻のホテルマンからで、傘を買ってきたので出掛けるときに渡すとのことだった。そんなことあるのか? ホテルマンが一客のために遣いに行くなんてことが。
「百均で買ってきたので、購入でも貸し出しでもどちらでも良いですよ」
 礼を言い、お言葉に甘えて借りることにした。和歌山の人々の親切に触れた最初の出来事だった。
 それにしても、この近くに百均なんてあるのだろうか。

 ますます強くなる雨足の中、1日目は電車で3駅の太地町に行くことにした。
 ホテルのフロントで借りた傘を差して、紀伊天満駅に向かう。電車の時刻は調べ済みだ。無人駅に一番乗りで着くと、後から二人組が来た。――母娘? いや、母にしてはあまりに小さく若い。やはり中学生と小学生の姉妹か。いや、待てよ、耳に見えるのはピアスのようだ。するとやはり母娘か、それとも高校生か大学生? いや、それにしても……。
 電車に乗るとたくさんの中学生が乗っていた。本数が少ないから知っている同士が多いのだろう。みんな関西弁できゃあきゃあ言っている。田舎らしい風景だと思う。ところが、彼らの身なりを見ると、みんな小綺麗で垢抜けた格好をしている。どこで買うのだろう……。
 初めて来た和歌山という地は、微妙に何かがずれている。車窓から見た風景だけではない。文化が違う。不思議なことが多い。ともすれば見過ごしてしまいそうだけれど、関西風に言えば、突っ込み所が多い。太地駅に着いたら、たくさんの中学生たちが一斉に電車の最前部に集まり、僕をどんどん抜かして降りていった。列も作らずに。これも関西の文化なのだろう。
 「日本全国どこに行ったって大して変わらない」部分もあろう。しかし、世界は、本当はもっと豊かだ。電車や車でほんの数時間行けば、そこには自分の日常とはまた違う日常が広がっている。「日常」だから、本来は不思議ではない。でも、その「日常」は自分が住んでいる世界とはまた別の世界だ。だから微妙にずれて見える。だからこそ世界は豊かなのだ。
 やはり無人の太地駅を降りたら、すぐバスが待っていた。運転手のおじさんが「どこ行く?」と声を掛けてくれた。「くじら博物館」と答えたら「150円」と教えてくれた。電車の中できゃあきゃあ言っていた小綺麗な格好の中学生たちとともに乗り込んだ。

 くじら博物館の前で降り、帰りのバスの時間を見ると、最終が16時44分。何と、くじら博物館の閉館時間よりも早い。雨にも増して、風も強まってきた。レンタカーを借りる決心をした。
 結局くじら博物館には入らず、目の前の食堂でくじら定食を食べて、この日は帰った。帰りのバスの運転手も、行きと同じ人だった。

 あとは、紀伊勝浦から新宮まで、必死にレンタカーを探して、この日は終わった。
 このとき、紀伊勝浦駅から新宮駅まで電車に乗ったとき、昼間目の前に座った女子高生2人がまた乗ってきた。太地のバス運転手も2回会った。このときは、1時間に1本しかない唯一の電車・バスだから、こういうこともあるのだろうとしか思わなかったが、こういうことがこの後の3日間で何度も起こることとなる。
スポンサーサイト
.17 2012 旅行 comment0 trackback0

comment

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://gonjunior9.blog25.fc2.com/tb.php/11-08f9aa9e
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。